(JAPAN PRECIOUS77号 2015spring「1冊まるごと運気上昇!! 天然石・パワーストーン特集」より記事を採録)
■今後の鍵はジュエリー&アクセサリー業界とのコラボによる高品質化・ファッション化
矢野経済研究所では2013年のパワーストーン市場規模を424億円と推定した(図1・2)。
パワーストーン市場の位置づけは、ジュエリー市場(9,617億円)とアクセサリー・ライトジュエリー市場*(8,910億円)が重複する約2,030億円の中に位置して、色石ジュエリー(1350億円)とも被っている。
*アクセサリー・ライトジュエリー市場とは、布や木、プラスチックの素材からシルバー素材中心で、一部で金やプラチナ、貴石・半貴石を使った装身具市場のことで、ジュエリー市場との重複部分には4℃やスタージュエリーなどが含まれている。
パワーストーンとは
「パワーストーン」という言葉が浸透する以前から「宝石が持つパワー」という考え方は様々な方面で提示されてきた。
もともと、古代から宝石は特別な石だからこそ珍重され、神秘的な力が宿っていると考えられ、幸運のシンボルやお守りとして使われてきた。旧約聖書では洪水後にノアが方舟で航海する時の灯りとしてルビーを掲げていたし、聖書成立以前から各民族の伝説の中で宝石の力が語られてきた。
宝石が持つ力を体系的にまとめたのがローマ時代の大プリニウス(22年~79年)で、自然界を網羅する百科全書「博物誌」全37巻の中で宝石に1巻を割いている。
本格的なジュエリーの歴史が浅い日本でも、第二次大戦前にはすでに守護石的な位置づけで誕生石が販売されている。
ジュエリーでさえあれば何でも売れた高度成長期時代を経て、ジュエリー販売が行き詰った頃に商品のストーリーや背景が重要視されるようになり、宝石が持つパワーが付加価値としてセールストークで語られるようになった。占星術や九星気学、風水などの占い師が宝石販売の催事に登場する場面が増えたのもこの頃である。
またまったく別のルートとしては、アメリカ発祥の整体術であるカイロプラクティックでクリスタルパワーを重視する一派があり、80年代頃前後から水晶が施術・療法に使われてきた。
現在でもパワーストーン市場で水晶が特別な位置にあるのは、カイロプラクティック業界の根強い支持があるからと思われる。
アメリカで1970年代から石に癒し(ヒーリング)の力があるというヒッピー文化の考え方が広まり、特に水晶にその力が強いとされていたが、これは70年代後半から盛り上がったニューエイジ運動に吸収されることになった。ニューエイジ運動は物質的な思考から解放されて超自然的・精神的な思考を重視する。ヨガやカイロプラクティック、パワーストーン(英語圏ではCrystal、Gemstone)によるヒーリングもニューエイジ運動の具体的な手段の1つである。
ニューエイジ運動は80年代後半に日本に上陸して、様々な鉱物が注目されるようになった。1988年には東京国際ミネラル協会によって日本初の東京国際ミネラルフェア*1が開催され、一部の鉱石・奇岩マニアから一般消費者に拡大していくミネラル&パワーストーンブームの先鞭をつけた。
「パワーストーン」の名称については、1987年に設立された東京・原宿のコスモスペースの八川シズエ氏が名著「パワーストーン百科全書」の中で、1986年にパワーストーンという言葉を作ったと主張している。
一方、1981年に不思議なもの・神秘的なグッズの専門店として九州でスタートしたトライアングルの野﨑達之氏は、1988年にアメリカの書店で「パワーストーン」の表記を目にして、ヒッピーカルチャーの流れを汲むこのムーブメントに、さらに石の歴史なども加えて、1989年のトライアングル渋谷店で「パワーストーン」を日本に初めて紹介した。
恐らく別々の場所で同時発生的に生まれた「パワーストーン」という名称は、以後マスコミに注目されるようになった。
(WEBマガジンに続く)
http://www.japanprecious.com/webmagazine/details.php?id=728