金の密輸入がクローズアップされているが、1年間で密輸された金は正規輸入量の34.7%、金額で24.7%に及ぶことがわかった。
香港日本総領事館は、2016年6月2日付けで旅行者に密輸に加担しないように注意喚起した(PDF参照)。それによれば、2015年7月から2016年6月の1年間で処分件数が294件(前年度比1.7倍)、脱税額が約6億1千万円(前年度比2.6倍)と過去最高を記録した。また金地金の課税価格の総額は約76億円だった。
財務省によれば2015年4月の消費税増税後から、通関で徴収される消費税を脱税する目的で密輸が増えたという。
通関局に問い合わせたところ、
①摘発された密輸金の課税評価額は年平均の小売価格が基準、
②貿易統計の数値は、税関における通関時に提出された輸出入申告書等を基礎資料として機械的に集計しているため、税関における通関手続きを得ることなく密輸出(入)された金については、貿易統計には計上されていない、
③各事件の調査によって明らかになった旅行者や貨物の出発地を密輸仕出地としている
とのことだった。
財務省貿易統計によれば、2015年7月から2016年6月の1年間の金の輸入は7,610.2kg、265億9,765万円である。*
この期間の田中貴金属工業の平均金価格をグラム4,405円とすると、密輸入量は1,725.2kgとなる。
とすれば、2015年7月から2016年6月の実際の輸入量は22.7%アップの9,335kg、金額で28.5%増加して342億円ということになる。
*弊社では輸入統計品目表のうち、品目コード710811000、 710812000、710813010、710813090を金の輸入量として算定している。
日本の金の輸入は2006年以降急激に減っており、特に15年、16年は10トンを大きく割り込むようになった。金価格の高騰で国内リサイクル金が増加したためと見られていたが、密輸金の流入も一役買っていたようだ。
なお摘発されたのは氷山の一角といわれており、実際にはこれ以上の密輸金が持ち込まれていると見られる。