混迷の2020年からの回復に導く、宝飾業界のプラチナへの転換
大切な人との関係性や記念すべき瞬間に焦点を当てることでプラチナは素早く立ち直り、ポストコロナの時代に継続して成長するための、強力な基盤を構築
プラチナは、市場シェアが比較的小さく高額であるにもかかわらず、新型コロナウィルスの蔓延によって引き起こされた下落傾向から逆転した最初の宝飾カテゴリーの一つである。プラチナ・ギルド・インターナショナル(PGI)は、毎年恒例の「2021プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー(PJBR)」を発表、ジュエリー小売業者やメーカーが回復のためにプラチナをどのように展開したか、プラチナの顧客層を巧みに拡大して利益率と収益性を高め、主要な世界市場で成長を取り戻したかを明らかにした。
2020年の消費者調査により、日本、中国、インド、アメリカの4つの主要市場で消費者の意識と行動の変化を追跡。コロナ禍の影響で有意義な人間関係や時間が再優先され、それに伴ってジュエリーは消費者の購入リストの上位を占めるようになり、重要な瞬間や関係性を示すため、より高価であってもプラチナを選ぶ傾向が強まった。「意味のある貴金属」としてのプラチナの地位は、ジュエリー業界がより魅力的なブランドストーリーで消費者を魅了することを可能にしたと言える。
プラチナ・ギルド・インターナショナルCEO ヒュー・ダニエルは次のように述べている。
「PGIでは、ゴールドやダイヤモンドが主流のジュエリーカテゴリーにおいてプラチナが優位に立つためのアプローチとして、チャレンジャー精神を大切にしています。私たちは当初からコロナ禍を、プラチナが業界の復興努力の重要な原動力となる機会として捉えていました。プラチナのユニークなストーリーと、業界の利益率および収益性への貢献により、消費者が店頭に戻ってきたときに業界の回復をリードするのは当然のことでした。」
【市場別プラチナ・ジュエリーのレビューと展望】
<アメリカ>
コロナ禍による大幅な混乱の中、消費者における優先順位の変化が消費者の目を価値や意味を示すジュエリーに向ける流れを作ったため、宝飾店にとっては有利な状況となった。ホワイトゴールドを避け、より低い価格のプラチナで収益性を高めたい小売業者からのPGIへの支援要請が大幅に増加した。PGIの年次取引調査によると、米国におけるプラチナ・ジュエリーの小売売上高は前年比3.4%増。パンデミックの影響で工場が閉鎖され、メーカーへの新品の販売に影響が出たが、小売店はこれを機会に古い在庫を販売し、結果的にビジネスが純増している。
ジュエリー業界では、プラチナを使用したブライダルジュエリーやダイヤモンド・ファッションジュエリーが好調に推移。これを受けて、「チョコレートダイヤモンド®」ブランドジュエリーを広めたことで有名な米国の大手ジュエラーであるLe Vian社などのパートナーがプラチナ・ジュエリーを優先的に販売した。Le Vianは最近、新しいプラチナ・コレクションをSignet Jewelersの一部門であるJaredで発売し、130以上の店舗で展開。その後、Le Vianのプラチナ・コレクションはさらに180のジュエリーショップで展開され、全米3,500の催事でも紹介されている。その結果、Le Vianの2020年のプラチナの売上は予想を62%も上回る素晴らしい結果となり、プラチナは、業界で高く評価されているLe Vianの「Red Carpet Revue Trend Forecast」において「2021 メタル・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。
この成長の上昇傾向は、より多くの小売業者が商品にプラチナを使用することで継続し、2021年のプラチナ・ジュエリー小売売上高は8年連続で緩やかな成長を遂げると予測される。
<日本>
業界は第1四半期には消費税増税から回復の兆しが見られたが、第2四半期以降はコロナ禍や東京オリンピックの延期などにより大きな混乱が生じた。しかし消費者心理は低下しているものの、日本の富裕層の間では全般的にポジティブなムードが漂っており、プラチナの牙城である高額ジュエリーや、資産性の高い貴金属ジュエリーの増加に寄与している。世界で最も成熟したプラチナ宝飾市場である日本では、プラチナの一人当たりの消費量と市場シェアが最も高いため、混乱の年にもかかわらず、プラチナ・ジュエリーの小売売上高は前年比10%減にとどまり、業績は比較的維持された。
日本ではプラチナは年配の方に愛されていますが、PGIと主要な業界パートナーは若い消費者に目を向け、彼らの生活や願望を反映する貴金属として位置づける「プラチナ・ウーマン」という新しいコレクションベースのマーケティング活動を展開。これは、競合する国内の大手小売業者数社が、共有の販売プラットフォーム上でパートナーとして合意した初めての試みである。このプログラムは、18歳から34歳までの若い世代の消費者1,000万人以上にリーチし、コレクションは小売パートナーのEコマースチャネルと200の実店舗の両方で取り扱われ、2021年にはさらに拡大される予定となっている。
プラチナ・ジュエリーの小売売上高は、2021年に向けて緩やかに増加すると予想される。PGIは、小売業者と協力して、若い消費者の間で「自分にとって意味のある貴金属」としてのプラチナの地位を向上させると同時に、裕福な高齢の消費者を引き付ける努力を継続していく。
<中国>
第1四半期は迷走したものの、第2四半期以降はプラチナ・ジュエリー市場が成長し、その結果、2020年のプラチナ・ジュエリーの製造量は2019年比で8%と比較的小幅な減少にとどまった。メーカーは製品の革新を優先し、コレクションベースの製品の新デザインを進めた。製造技術の向上により大胆なデザインが可能になり、プロセスの効率化や地金価格の好条件と相まって、プラチナはジェムセット部門でもコスト競争力を高め、業界にとって魅力的な存在となった。プラチナ・ジュエリー製造業の回復は、2021年には速度を落としながらも続くと思われる。
PGIの小売パートナーの売上高は前年同期比で11%減少。プラチナ・ジュエリーの下半期の成長は、プラチナ・カテゴリーに重点を移すという戦略的な選択をした大手小売チェーンと、地方都市への継続的な拡大によってもたらされた。中国本土のジュエラーは、昨年の混乱をプラチナが業界の回復のための重要な原動力となる機会と捉えていた。PGIは、新製品の再入荷を促進し、大規模な販売活動を行うために、州ごとに「Reboot」という取り組みを開始。PGIが厳選したより現代的なデザインの商品をオムニチャネルの販売イベントと組み合わせて迅速に提供し、店舗へのトラフィックとコンバージョンを増やすことを目的としたこの「Reboot」は、1,277の小売店を対象に1,300万人の消費者を網羅し、前年同期比で約40%の売上増という成果をもたらした。
<インド>
2020年3月から9月までのロックダウンの延長によって最も深刻な状況となったインド市場では、10月になってようやく業界が販売の勢いを取り戻したため、PGIの小売パートナーの売上は2020年に全体で前年比36%の縮小となった。PGIの優先パートナーである大手チェーン小売店はこのような厳しい状況下でも非組織小売業態よりも優れた業績を上げており、PGIは第4四半期の本格的な回復達成に向けて、プラチナの認知度、共感度、関連性を維持するよう努めている。
入店者数が激減している中でインドPGIは迅速に対応し、既存のソーシャル・デジタルメディア戦略を活用して連帯を呼びかけるメッセージを発信、消費者の再来店を促す「Season of Hope」プログラムを展開した。参加した300都市の小売店ではプロモーション期間中、プラチナ・ジュエリーの売上が前年比+33%という驚異的な伸びを記録。また、「Season of Hope」のプログラムはオックスファムを通じて4,500世帯に救援物資を寄付し、22,500人以上に救援の手を差し伸べた。
2020年第4四半期および2021年第1四半期において、PGIの戦略的小売パートナーは前年同期比で2桁の成長という健全な回復を遂げた。しかし、新型コロナウィルスの深刻な第2波がインドに影響を与え続けているため、消費者の需要は停滞しており、小売業者は当面の間、慎重な姿勢を崩していない。
新型コロナウィルスの世界的流行の先行きが依然不透明な中、ジュエリーではプラチナが引き続き重要な地位を占める。「プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー2021」の調査結果から、ジュエリー業界におけるプラチナの成功は、愛や祝福の瞬間、メッセージ性のあるギフトに最もふさわしい貴金属としてプラチナを差別化しようとする、業界の長年の努力の結果であるといえるであろう。
【「プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー」について】
「プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー(PJBR)」は、PGIが活動拠点を置く主要4か国(日本、中国、インド、アメリカ)を対象に、独立調査機関による宝飾用プラチナ需要、小売販売、業界トレンドの調査結果を、PGIが年次報告書として編纂したものである。この調査は、自動車触媒に次いで世界第二位の消費量を誇るプラチナ宝飾用需要の実績を明らかにするものであり、上記4か国で製造業者および小売業者を対象に実施された。
「Platinum Evara」(インド)
「Platinum Woman」(日本)
「Le Vian Chocolate Diamonds®ブランドジュエリー」
(アメリカ)