ジュエリー専門情報誌:JAPAN PRECIOUS(ジャパン・プレシャス) (株)矢野経済研究所
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プレシャスWebマガジン一覧 > 2010年01月26日

■インターネット・ジュエラーの情熱――宝石の伝道師青木貴彦氏

 

ECサイト:「101番目の小さな宝石店」

 

(ジャパンプレシャス55号2009Autumn掲載)

 

101番目の小さな宝石店

 インターネットの普及で様々な分野のマニアが情報を交換し、オフ会などで交流して新しいマーケットが出現するようになった。ジュエリーでも全国に点在していた宝石マニアが、目に見える形で顧客層を形成しつつある。マクロな視点からは「天然石」「パワーストーン」ブームしか見えてこないかもしれないが、「色石」ファンは確実に裾野を広げつつある。

 「101番目の小さな宝石店」を主宰するイルフィアの青木貴彦社長は、自社サイト通じて色石ファンを増やしている代表的なジュエラーであり、またジュエリーECの現状を語る上で欠かせない存在だ。
今年に入ってからでもすでに数回、セミナーの講師を勤めており、熱心に聞き入る聴講者の姿からは、ECへの興味と注目の高さが感じられる。それ以上に印象的なのは、ECサイト運営のノウハウを惜しみなく披露する青木社長の熱意だろう。

 1昨年「宝石選びの基礎知識」(PHP研究所)を出版したが、宝石の本としてはベストセラーといっていい販売部数となった。まさに「宝石の伝道師」にふさわしい活動ぶりだ。
 

 

「宝石選びの基礎知識」(PHP研究所)

  

宝石の表情を伝える写真を

 もともと99年に宝石の解説を目的としたHPを作ったのだが、設置した掲示板にマニアが出入りして意見交換しているうちに具体的な注文が発生し始めた。そこで本格的にECサイトを立ち上げたのが2003年のことだった。

 「101番目の小さな宝石店」は、色石に特化した専門サイトである。一番の特徴は、サイトの宝石の解説、ブログ、メールマガジンに至るまで、青木社長の色石に対する愛情とこだわりが強く感じられることだ。
たとえばサイトに掲載された写真は色合いの深さと石の奥行きが感じられ、宝石の魅力がはっきりと伝わってくる。

 「本を作る時にも苦労したのですが、プロのカメラマンは物体を綺麗に写す技術はあるんです。だけど僕は物体を綺麗に写すのではなくて、石がどういう美しさを持っているかを伝える撮り方をしています。石の一番いい表情を、つまり角度なんですが、角度を捉えてその美しさを伝える撮り方なので、プロから見ると映り込みが多いとか、影が入っているとか言われますが、それで構わない。僕は石の表情を写しているので、石が好きじゃないと同じ写真は撮れないと思います」(青木社長。以下同じ)

 ネットの怖さはすぐに追随者・模倣者が出てくることだ。ページ構成やレイアウトを真似して、商品説明を部分的に借用し、商品を入れ替えれば似たサイトはできる。実際「101番目の小さな宝石店」を模倣したサイトもすでにいくつかできている。しかし画像の撮り方、コメントの書き方、文脈の勢いなど、宝石への思いは確実にお客に伝わってしまう。形だけ真似をしても同じように売れはしない。

 「101番目の小さな宝石店」の顧客層は20代から60代、中心は30代・40代である。ルースだけの販売が6割、ジュエリー制作まで行うケースが4割。ネットだけで販売することもあるが、来社してもらったり出張して実際にルースを見てもらうように心がけている。ジュエリー制作の場合は好みの把握からデザイン画、加工の途中経過、完成まで2~3ヶ月かけてメールのやり取りでコミュニケーションをとっている。

 「本当は皆さんジュエリーを作りたいのですが、お金を貯めていると、また新しいお気に入りのルースが出てしまう。だからルースばかり貯まってしまうのでこんな売上割合になります。ルースはその時買っておかないと手に入らないですから。うちの場合お客様同志で争奪戦状態で、入荷した石の写真をブログで報告するだけで、値段もスペックも出してないのに売れてしまいます」

 

「宝石店は入りづらい」という声

 「101番目の小さな宝石店」のルースの平均単価は高い。それだけに色石のマニア、ジュエリーのヘビーユーザーばかりが集まっているのではないかという印象を受ける。ところが同店で100万円単位のルースを買う同じ客が、他のサイトで1万円の淡水真珠やパワーストーンを購入したり、オークションを利用して数万円のジュエリーを入手している。

 「女性は本当に賢い。皆さん、店を使い分けているだけです。お客様を囲い込むなどという、おこがましいことはできるわけがありません。業界の中だけで真似されたとか情報を独占したとか言ってる場合じゃないです。ブライダルが先細りになるのはわかり切っているから、業界を挙げて色石を売るように努力しないと。だから僕はセミナーなどで情報を公開するし、秘密にする気持ちもないんですよ。うちだけで売れているよりは、10店舗で売れてる方が絶対うちも売上あがりますから」

 2ヶ月に1回ほど各地でお客を集めてオフ会を行うが、青木社長が積極的に勧めているので、お客は手持ちのルースを持参してお互いに見せ合って楽しく交流している。そこには値段の高低や希少性の有無よりも、色石という共通項を媒介にして知らない人がリアルで出会うというネットならではの社交の場がある。

 

 「お客様は店舗の有無や規模にはこだわっていないんです。ただ、商品が本物であるかどうか見たい。ところが店舗は入りづらいと皆さんが言います。マニアですらそうです。気に入るかどうかは見てみないとわからないけど、店舗に行ったら遠慮があるし、営業が強いと買わなければいけない状況に追い込まれてしまう。その点インターネットは気軽に商品を見られます。ECというのは実際には店側とお客は会っていなくても、接触する機会を手軽に作りやすいのがメリット。その接触をどうするか。基本は接客なんです」               

 

 

青木社長の1週間の基本的な行動は、一見するとゆとりのあるスケジュールに思える。
「以前は平日10時は当たり前、12時まで仕事をしていました。忙しすぎて何度も倒れていたので、今は忙しくしないように心がけています。振り返ってみると無駄な動きが多かったんですね。店舗がないし、単価が大きくて利益をとっているので1人でやれています。ただ自分としてはまだまだの状況です」

 今後は、ネット販売よりもリアルでの売上を意識的に増やしていくという。オフ会や来社を促すことで、実際に対面販売するほうがやはり手間がなく早い。リアルを強化することで数字は確実に上がっていくと予想される。
 最近、65歳以上の引退した男性から「妻に世話になったから」という理由での注文が増えてきた。共通しているのは教養が高く、ネットも扱えること。
「こういう人たちがもっと増えるといいですね。色石の未来が楽しみです」
 

有限会社イルフィア
http://www.101jem.com/

 

101番目の小さな宝石店 代表取締役 青木貴彦氏
 

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