一過性で終わらせないための広報
――広告予算はどれぐらい見ていらっしゃるのですか。
山田 お金はかけます。億単位としか言えないですが。ただ私としては、広告だけに頼らず、広報記事を重要だと考えています。広告だけで一般消費者にきちんとコンセプトを伝えられるかというと、そうとは限りません。
知名度を上げるためには重要な手段ですが、フォーエバーマークならではのメッセージや約束は、広報を通じてきちんと伝えていくことを心がけています。
今の消費者は新聞や雑誌を見て、自分で勉強して本当にいいなと思ったら買いに行かれます。
フォーエバーマークをお買い求めいただくお客様には、まずフォーエバーマークについて紹介されている記事を読んでしっかり理解するというプロセスを踏んでいただきたいと考えています。今の段階で具体的には申し上げることはできないのですが、秋口には大胆な企画を計画しております。
――いろいろな手段をお考えているわけですね。
山田 これまでのように大規模に宣伝して、格好いいからというだけでブランドが継続する時代ではありません。きちんと理解してご購入いただけないと、一過性で終わってしまいます。
10年後には、「ダイヤモンドといえばフォーエバーマーク」と言われるのブランドになることが目標です。
5月15日から販売が始まりますが、その後6月18日には世界の新鋭クリエイターがデザインした「フォーエバーマーク プレシャス コレクション」を発表して盛り上げていきます。(*注)
これは今決まっているだけでも、5月末から7月ぐらいにかけて10誌のファッション誌で特集されます。それぞれかなりのボリュームですから、他のブランドさんもびっくりされると思います。楽しみにしていてください。
10月に第2のトリロジーを発表
山田 プレシャス コレクションは、フォーエバーマークならではのアスピレーション溢れる世界を訴求しながら知名度を高めることが目標ですが、売上に結びつくという意味では、本年10月に「トリロジーの第2弾」ともいうべき新しいコンセプトのジュエリーデザインを発表します。(編集部注:フォーエバーマークエンコルディアコレクションのこと)
2003年のトリロジー発売以降、ダイヤモンド市場は3%、4%と成長しました。過去10年間低迷していた国内市場の活性化にトリロジーが大きく貢献したことは間違いありません。開発中の新コンセプトもこれに続くものとして大きな反響を呼ぶことでしょう。
具体的な内容は、現段階ではお見せすることが残念ながらできないのですが、新コンセプトについて実施した消費者調査では75%の方から高い評価を得ています。
また年収600万円以上の消費者では84%の方から高い評価を頂きました。さらに、そのうち77%がこの商品を買いたいと回答しています。
フォーエバーマークやデビアス グループという名前をだせばもっといい数字が出ると思いますから、そういうところで我々はかなり期待してます。一部メーカーの方にもお見せしましたが、「これは売れる!!!!」とおっしゃっています。
今回のコンセプトを使えるのは当社と契約する約100店のジュエラーだけです。そのために名前とデザイン両方とも意匠登録と商標登録しています。トリロジーとは違った形で提供することで一過性ではない静かなブームになるでしょう。
フォーエバーマークとデビアス グループ
――あちこち取材中にネガティブな意見の代表としては、小売店としてのアイデンティティがなくなるのではという点と、店頭でフォーエバーマークとそれ以外をどう説明するのかという2つです。
山田 ビジネスの透明性や信頼性が、消費者にとって非常に重要になっていますが、それはフォーエバーマークのブランドコンセプトそのものです。それが今の時代にすごくマッチしているし、参加店のビジネスにも役立つとおっしゃるオーナーさんもいます。
またある地方一番店では、ブランド感は共有しながら、デザインは自分たちの顧客に合わせた提案できることを評価していただいています。そんなブランドはありませんからね。
ダイヤモンドの差別化については確かに小売店さんに戸惑いもあるかと思います。店頭にダイヤモンドが100個置いてあって、そのうちの10個がフォーエバーマークで、残りの90個にはマークがついてない。「どう違うの?」と聞かれた時ですね。
ただしそれは今慣れてないからであり、ひとたび伝え方さえ確立できれば問題はないと思います。フォーエバーマークは鉱山から取扱店まですべて信頼できるルートができていて、デビアス グループが保証している。その分プレミアがつきます。
他のダイヤモンドも当然希少ですばらしいものですが、お客様の声に応じて、うまく売り分けていかれると思います。
――先ほど中国の話が出ましたが、デビアスにとって日本は前ほど位置づけが大きくないんじゃないかという業界の人の見方があります。新興国にバジェットが行って日本は見放されているんじゃないかと、それが払拭されるような元気の出るメッセージが感じられるといいのですが。
山田 正直に言いますとフォーエバーマークに限らず、デビアス グループはある意味日本に一番力を入れています。確かにいくつかのラグジュアリー・ブランドは、今は中国に一番力を入れているでしょう。
ダイヤモンドの売上は確かにアメリカが上ですし、中国も大事ですが、本当に成功しなければいけないのは日本だと考えています。
その理由のひとつには日本に対する強い憧れがあります。品質に関して世界トップレベル。日本の消費者の品質に対する要求度は非常に高く、世界一ともいえます。アジアも欧米も日本の品質に関しては絶大な信頼を寄せています。日本で成功すれば品質面で保証されるんですね。
ダイヤモンドは奥が深い
――最後に、宝飾業界の印象をお聞かせください。怪しげな業界に思われましたか?(笑)
山田 私は学校を出てから30数年間化粧品ばかりやっていましたので、宝石のことはよくわかっていませんでした。いまは知れば知るほどこんなに奥が深いということがわかります。マスコミからインタビューを受けるのも今日が初めてです。徐々に宝石についても理解が深まり、毎日が新しい驚きに持ち溢れています。
宝飾業界に怪しいイメージがあるとすれば、それはやはり透明性や倫理性についてかもしれません。ダイヤモンドは消費者にはなかなか見分けがつかない。処理石とか人工石といっても、信頼のおける専門家の鑑定サポ-トなしに判断するのは非常に困難です。
ところがダイヤモンドを一生に1度しかお求めにならない方もいるわけです。ご主人からもらったものだからと、大切に大切に使っているのに、それが疑わしいものだとしたら悲しい物語になってしまいますよね。
お客様には正しいものを正しく理解して買っていただくということが、とても大切なことになってきます。そこがダイヤモンドの奥の深いところだと申し上げたのです。難しいけれど正直にビジネスしていれば成功するのではないかと思います。
化粧品業界もすごく面白かったですよ。化粧品はお客様が購入した商品の傾向から、次に何を求め、お勧めすれば良いかというおよその予想がつきます。
一方ダイヤモンドはそうじゃない。ブライダルに始まり、初めてのお客様が非常に多いです。毎月お買い上げいただける方っていませんよね。
だからその一回一回の出会いを大切に、店頭での素晴らしい体験を通じて、これはフォーエバーマークダイヤモンドだということで喜んでいただければ、多分そのダイヤモンドは曾孫や玄孫にまで伝わっていくだろうなという夢を持っています。
(完)
山田幸洋(やまだゆきひろ)
1978年、資生堂に入社。22年間の在籍中に、資生堂オブ・ハワイの社長(1990-1994)、東南アジア地区のエリアマネージャー(1994-1997)、資生堂オブ・タイランドの社長(1997-2000)などの要職を歴任。
2000年、シャネルに入社し、香水・化粧品本部長に就任。任期中にシャネルを日本における輸入化粧品ブランド売り上げを4位から第1位へと押し上げる。
2008年12月より現職。高級ブランドにおける豊かな経験でForevermarkをリードする。
明治学院大学卒業(社会学専攻)。趣味は読書とゴルフ。一男一女の父である。
(注)
「フォーエバーマーク プレシャス コレクション」は、世界で活躍するクリエーターと作家が織り成すジュエリーと小説のコレクション。Forevermarkのキーワードのひとつ”Precious”(特別な・かけがえのない)をもとに製作。
クリエイターは伝説的スーパーモデルのアレック・ウェック、香港のグラフィックデザイナーで三井住友銀行のロゴや中国のコカコーラのロゴをデザインしたアラン・チャン、ファッションデザイナーのバーニー・チェン、日本人では山本耀司の娘でファションデザイナーの山本里美など11名。国際色豊かでかつ幅広いスタイルのジュエリーが揃い、ブランドコンセプトを象徴的するコレクションである。
小説には、アレグザンダー マコール スミス、ポール セロー、フィリッパ グレゴリーのほか、林真理子など8名の著名な作家が参画。