世界経済危機の影響から脱し回復へ向かおうとするドバイマーケットの動向
Atlantis概観とオープニングイベントの花火
(ジャパンプレシャス54号2009年Summer掲載)
2008年11月20日、ドバイでは、世界最大の人口島“パーム・ジュメイラ”にオープンした超豪華ホテル「Atlantis」のグランドオープンイベントが、世界中から多くのハリウッドスターや著名人らを招待して盛大に開催された。
イベントのハイライトでは、北京オリンピック開会式を遥かに凌ぐ約20億円を投入した盛大な花火が打ち上げられ、贅の限りを尽くした宴を彩った。
招待客の多くは、ホテル内にオープンしたばかりの“グラフ”や“ショパール”等の有名ブランド店で、数多くの高額商品を購入していったという。それから数か月が経過した現在、このようなドバイらしい華やかな話題はめっきり減ってしまった。今回はこの様に激変するドバイマーケットについてレポートする。
■ロシア人買い物客の減少
2008年秋のリーマンショック以前は、世界における経済成長のシンボル的存在ともいえるのがドバイであった。
同国では経済成長とともに宝飾マーケットも急成長を遂げ、人口が約220万の都市に約600店舗の宝石店が出店されるまでに至った。
そして、購買する側としてこの成長を支え続けてきた主役がロシア人である。特にロシアの首都モスクワに暮らす富裕層にとって、美しいビーチと暖かい気候、そしてショッピングを楽しめるドバイは憧れの場所となっていた。
【ドバイとUAEの実質GDP成長率推移】
【UAEへの投資額推移】
(2007年、2008年は㈳海外建設協会の“中東の建設市場動向に関する調査報告”より、2009年は弊社予測)
【ドバイの概要】
①ドバイ首長国
アラブ首長国連邦(UAE)を構成する7首長国(※)の一つ※アブダビ、ドバイ、シャルジャ、アジュマーン、ウンム・ル・カイワイン、ラアス・ル・ハイマ、フジャイラ。
②面積:3,885k㎡(ほぼ埼玉県と同じ)
UAEの総面積は83,600k㎡(ほぼ北海道と同じ)。ドバイがUAE全体に占める割合約4.6%
③人口:145万人
内UAE人約20%、他にアジアを中心に約200の国と地域の人々が居住。
④GDP:1,901億ドル(2007年:中央銀行、経済省)
⑤GDP成長率:16.5%(2007年:中央銀行、経済省)
⑥直接投資額:約230億ドル
■店舗数1,100のモールはガラガラ
7つ星ホテルとして有名な「Burj Al Arab」内に店舗を構える宝石小売店の取締役に話を聞いたところ、顧客の実に50%強がロシア人であったという。
特に5ct以上のダイヤのシングルストーンを使用したクラシックデザインの商品や、ダイヤをふんだんに使用したビッグフェイスの腕時計がよく売れたという。また、彼らの目的は宝石だけでなく、右肩上がりで成長を続けていた不動産市場でもあった。
しかし、リーマンショックによってドバイの不動産も音を立てるように暴落し、彼らは大きな痛手を負うことになった。とりわけ2009年1月以降は、ロシア人のツーリストが極端に少なくなってしまったという。
他にも、ドバイ国内で約20店舗を経営する大手小売チェーンのマネージングダイレクターの話では、2009年1月の売上金額が前年同月比で約40%ダウンしたという。やはりロシア人の観光客減少が大きな要因であるとのことである。平均販売単価も日本円で約10~15万円位に落ち込んでおり、とりわけ高額品が売れなくなったという。
2007~2008年のドバイは、高額品を専門に取り扱うブランドの進出ラッシュであった。例えば、日本では日比谷のペニンシュラホテルに1店舗しかオープンしていない“グラフ”は、この2年間で直営店を3店、ドバイだけに相次ぎオープンした。
また、世界最高の南洋真珠を扱うと言われている“パスパレイ”も、前述のAtlantisホテルへの出店を含む直営3店舗をオープンしている。しかし結果的にはターゲットとなる顧客の数が減り、競合店が増えたことによって、高額品ブランド間の競争は確実に厳しさを増していると言えよう。