メールマガジン、宝飾業界ニュースでお伝えしたとおり、日本宝石鑑別団体協議会(AGL)が本日3時に記者会見を行い、消費者からの依頼があればAGL加盟社が再鑑定を無料で受けることになりました。また合わせて全国宝石学協会からのAGL退会申請を受理していることを発表しています。
AGLに加盟する鑑別機関の鑑別グレーディング規約には、
第14条(鑑別書・レポートの誤りの補償)
1. ●●●(鑑定機関の名称)が発行した鑑別書・レポートに記載された結果が客観的事実と異なることにより依頼者が財産的損害を被った場合、●●●は、依頼者に対し、当該鑑別・グレーディングに対して●●●が受領した手数料の金額の範囲内で補償する。
2. 依頼者が本状に基づいて●●●に対して補償を請求することができる期間は、依頼品に対する検査実施年月日より起算して満一ヵ年とする。
3. 本条に基づき●●●が補償する相手方は、当該鑑別・グレーディングの依頼時に適法に登記又は登録された住所及び商号(又は氏名)を有する直接の依頼者とする。
4. ●●●は、いかなる場合でも前項の直接の依頼者以外の第三者の損害の補償をすることはない。
とあります。(下線部分は編集部)
AGLはこの規約を曲げて再鑑定するわけですが、ボーダーラインのあいまいさを排除して厳しく鑑定するでしょうから、恐らくかなりの数のダイヤモンドがランクダウンしてまたひと騒動起こる可能性があります。
記者会見場にはたくさんの一般マスコミがつめかけて、とりわけ「ボーダーラインとは何か」という疑問が強かったようです。
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5月15日付毎日新聞朝刊の1面トップで「ダイヤ鑑定かさ上げ」「大手の『全宝協』色を最大1段階」「業界団体が聴取へ」と報じられて以来、朝日新聞やテレビなどでも取り上げられ、宝飾業界は寄ると触るとその話題で持ち切りでした。
*記事中に弊社の宝飾品小売市場規模が引用されていますが、取材もしくは情報提供は受けていません。
宝飾関係者は1面トップで取り上げられたことについて、まず驚きを見せていました。
実は毎日新聞の系列週刊誌「サンデー毎日」は、いままでたびたび宝飾業界の鑑定鑑別問題を取り上げてきています。2002年には「パパラチア」の鑑別をめぐって全宝協の鑑別ミスを指摘しました。ところが2004年にはダイヤモンドのボーダーラインのカット評価についての記事でAGTジェムラボラトリーと訴訟になり、敗訴しています。
というわけで、今回の記事は不謹慎な言い方をすると「弔い合戦」のようなものではないかと指摘する関係者もいます。
ただし、こうして外部からの指摘を受けることは、宝飾業界があいまいにしてきた問題をクリアにするよい機会でもあります。
サンデー毎日ではなく本紙1面であることを考えると、同紙は産地偽装や肉の等級偽装などに関連した大きな消費者問題の一環としてとらえているようです。確かに商品の価格の差は、冷凍コロッケ1個よりもはるかに影響が大きいことが考えられます。
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ところで、衝撃的なタイトルの割には、記事だけで事実関係を判断するのは難しいものがあります。元社員の証言や困惑する宝石店・消費者の声に比べて、全宝協の言い分が数行しか掲載されていません。テレビのニュースも全宝協の主張はカットされて、ほんの数秒の放映でした。
全宝協の言い分は同社のHPに掲載されていますが、これも新聞記事とかみ合わない部分が多く、大多数の宝飾関係者や消費者には事情がわかりません。記者会見には全宝協は出席していなかったので詳細は不明です。
全宝協は取引先にファックスを流し、説明にも出向いたようですが完全にカバーしたとは言いがたく、御徒町に流れる噂や憶測から判断するには事実の裏づけが難しい状態です。
実は今回の騒動で一番の問題はここではないでしょうか。
消費者保護は重要ですが、業界誌としての立場であえて業界目線でいえば、全宝協は消費者に直接対応する小売店へのフォローを、真っ先にすべきだったのではないでしょうか。
98年の某鑑定機関の鑑定ミス問題の際は、その対応はすばやく広範囲でした。
ところが全宝協は「かさ上げ」が全社的な意図ではなかったという1点にこだわりすぎたあまり、報道されてからの1週間に、不信感を持つ消費者や、消費者に直接対応する小売店の苦境や、小売店から問合せを受けるメーカー卸への初動対応が不十分だったと指摘されても仕方ないでしょう。
水曜日には同社の鑑定書発行日検索システムがスタートしましたが、木曜には早くもサーバーダウンしたのか「システムにトラブルが発生したため、現在利用いただけなくなっております。現在復旧作業を行っておりますので今しばらくお待ちください。」という表示が今も出たままで、ではどうしたらいいのか他に案内がありません。(金曜日18時現在)
同社社内での混乱ぶりが窺える状況です。
しかしこれでは消費者、小売店、メーカー卸は困る一方です。
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「業界の自浄能力に任せるだけでなく、消費者庁や経済産業省も、監督機能の強化を検討すべき問題ともいえそうだ」(毎日新聞5月15日)のように、鑑定士や鑑定機関を公的なものにするとか、官庁の監督下に置いたらどうかという議論もありますが、耳障りは良いけれど果たして実効性があるのでしょうか。また「誰もが賠償などを要求できる仕組みが求められる」ともありますが、どういう意味なのでしょうか。
まずあまり望ましくない方法としては、たとえば鑑別鑑定料に上乗せしたり、日本ジュエリー協会が会員に課金してプールした基金を、鑑別鑑定の問題で被害を受けた消費者への補償金とする方法が考えられます。
この方法は公官庁受やマスコミ受けしますし、満足する消費者もいるでしょうが、本当の消費 者保護になるでしょうか。
実は日本訪問販売協会は、訪問販売の被害にあって返金されない消費者を保護するために、昨年この基金を創設しましたが、脱退する会員が相次いでいます。ダイヤモンドのように高額で販売個数が多い商品の場合は、あっという間に基金が枯渇してしまいそうです。
鑑別機関を非営利団体に一本化する案もありますが、ボーダーラインの問題は解決しません。AGLで規約を定め、ボーダーラインの石はすべてランクを下げることにして、「本当は上のランクにしてもいいけれど、評価が分かれることがあるので安心・信頼のためにランクを下げてあります」という趣旨を鑑定書に表示するのはどうでしょうか。
鑑定眼や販売力のある小売店なら、上のランクの値段で販売することができるかもしれません。しかしこの方法も、結局ボーダーラインのボーダーラインはどこかという根本的な論議が起きてきます。
ここ1週間でブログなどで意見を表明したのは、全宝協の鑑定書を使っていないジュエリー関係者が大半を占めています。
だから意見を言いやすいという面はありますが、彼らの自信を裏付けているのは、一番厳しいとされるAGTジェムラボラトリーを使っているからというわけではありません。
鑑定書だけを頼りにせず、自分で選んだ基準や嗜好があるからこそ、自信を持って消費者に勧めることができる…。そんな風に見受けられます。
今回の鑑定問題は、いろいろなところに飛び火する可能性がありますが、宝飾業界を振り返るいいチャンスかもしれません。