カルティエ現代美術財団は、アルタヴァスト・ペレシャン『Nature』展の一環として、この伝説的な映画監督に光を当てるオンラインプロジェクト「Encounter with Artavazd Pelechian」(アルタヴァスト・ペレシャンとの出会い)を、財団のウェブサイトに公開する。このプロジェクトは、アーティスト自身との緊密な協力によって実現した野心的な探求の成果である。映画評論家のセルジュ・ダネー(Serge Daney)が「映画史におけるミッシングリンク」と評した、アルタヴァスト・ペレシャンという輝かしく比類のない映画監督の、生涯と作品を探っている。
「Encounter with Artavazd Pelechian」では、ペレシャンがアルメニアで生まれてから2020年にカルティエ財団で初公開された新作「Nature」を制作するまでの、キャリアのマイルストーンを振り返る。ペレシャンのこれまでの10本の映画作品に加え、貴重な文書や歴史的な写真、アート・映画関係者からの寄稿や投稿が紹介。
映画監督のレオス・カラックス(Leos Carax)は、ペレシャン映画への称賛を示し、歌手のパティ・スミス(Patti Smith)は、2014年にカルティエ財団で上映された彼の作品にインスパイアされ、コンサートの中でオマージュを捧げた。また、映画監督のピエトロ・マルチェッロ(Pietro Marcello)は、ペレシャンのビデオポートレートを新たに編集。
カルティエ財団は、他のアーティストや思想家たちからも、ペレシャンへのメッセージを短い動画や手紙の形で集めている。展覧会の開幕に際し、映画監督のアトム・エゴヤン(Atom Egoyan)やアンドレイ・ウジカ(Andrei Ujica)、アーティストのサラ・ジー(Sarah Sze)、メリク・オハニアン(Melik Ohanian)、ギジェルモ・クイッカ(Guillermo Kuitca)、哲学者のエマヌエーレ・コッチャ(Emanuele Coccia)らから、自宅やカルティエ財団で撮影したビデオメッセージが寄せられた。それらは、エレバン(アルメニア)にとどまり続けた、この映画界の巨匠に対する称賛と尊敬を表している。
バーニー・クラウス(Bernie Krause)やクラウディア・アンデュジャール(Claudia Andujar)など重要人物をテーマにした、昨今のカルティエ財団のオンラインプロジェクトと同様に、「Encounter with Artavazd Pelechian」は、新たな寄稿や投稿、監督の活動に関する情報が更新される、進化型のプロジェクト。
カルティエ財団は、ペレシャンの生涯やキャリアの節目となる出来事や映像、アーカイヴ資料に関する情報を、毎週ソーシャルメディアで配信。このオンラインプロジェクトでは、異彩を放つこの映画監督と、その叙情的でタイムレスな作品を取り巻く謎を明らかにしていくとしている。
【アルタヴァスト・ペレシャン『Nature』展】2021年4月25日まで
アルタヴァスト・ペレシャンを取り上げるフランス初の展覧会である『Nature』展は、27年ぶりの新作「Nature」、1966年制作の初期作品「Landof the People」、農民の暮らしを描いた1975年の「The Seasons」といった、プレシャンの代表作の間に新たな対話を促している。カルティエ財団とツェット・カー・エム映画研究所が2005年に制作依頼した映画「Nature」は、寡作ながらも輝かしいフィルモグラフィを誇る監督が15年をかけて完成させた作品である。本展は、ときに予言的な特徴をみせる叙情的な「Nature」という作品を通して、映画界の偉大な作家に光を当てている。
カルティエ財団は、アルタヴァスト・ペレシャン『Nature』展と併せて、サラ・ジー『Night into Day』展も2021年4月25日まで開催する。