参照:「宝飾業界に新しい資格検定制度-ジュエリー・リモデル・カウンセラー資格」
http://www.japanprecious.com/news/index.php
記者会見での山口遼氏の発言要旨
日本リ・ジュエリー協議会の「ジュエリー・リモデル・カウンセラー」の記者会見席上で、宝飾評論家として有名な山口遼氏が概略として次のように挨拶していました。
「ジュエリー・リモデル・カウンセラー資格検定制度の創設は、縮小しつつある宝飾市場で方向として基本的に間違いがない。基本的な間違いがないのなら事業を進めていくべきだ。
ジュエリーの日本での本格的な歴史はまだ半世紀。その点歴史の長いヨーロッパはジュエリーの先進国だが、そこではジュエリーの新しい物の流れと、古い物の流れるルートは別になっている。日本のように新しい物と古い物(リモデル)が共存しているような形はない。
50年も経てば日本でもそれぞれの業態に分かれていくと思うが、現段階では資格制度のような人為的な技術を加えないと、古いジュエリーは業界に還流しないでお客の元に止まってしまう。
この資格を持った人がお客様の身近にいれば、そんなことが出来るのかという啓発になる。お客が持っているジュエリーのうち、気に入られていないリモデル予備軍の在庫が10~15兆円分はあると思う。それが出てくる。
またもうひとつの目的としては、価値のあるジュエリーとは何かということ、長い目で見て還流できない・リモデルする価値のないジュエリーとは何かということを、消費者に分かってもらえるようになってくる。
それはジュエリーを評価する仕組みを作っていくことにつながる。業界全体として消費者保護の流れにしなければならないが、現在の業界を変えていく1つの手段になる。
宝飾業界の人は、何もしないで不景気・売れないといっていても仕方がない。
業界は作り直す価値のあるものを提案していくべきで、その具体的なシステムを作る必要があり、日本リ・ジュエリー協議会の進むべき方向は間違っていない。」
目に見える基準が必要になったリフォームビジネス
辛らつな批評で有名な山口氏の含みのある発言ですが、推測を交えて解説しましょう。
ジュエリー業界では、不況になるたびにこれまで何度かリフォーム(リモデル)ビジネスブームが起きてきました。景気が上向けば新製品が売れるようになって、いつの間にか立ち消えになってしまうのですが、右肩下がりで宝飾市場が縮小し続けてきたために、今回のリフォームビジネスに対する関心は長く、本格的になってきていました。
そこに起きたのが貴金属相場の高騰による地金買取ブームです。
地金買取ブームによって、ジュエリー業界にはこれまで以上に大量のジュエリーが、消費者から還流してきました。
その結果いくつかの問題点や、新ビジネスがクローズアップされてきました。
たとえば買取りに刺激された、消費者のリフォーム需要の増加。新製品が売れないので、リフォーム市場に参入しはじめたメーカーや宝石店。今までの質屋や中古ブランドショップと異なる、新しい業態でのリサイクルジュエリー販売店。さらには買取り時にゼロ査定されるカラーストーンの評価の問題です。
これらを踏まえて山口氏の言葉を補足しますと、まず「基本的に間違いがない」という発言の根底には、既存のジュエリーメーカーや宝石店の、リフォームビジネスへの潜在的な反発があります。
当然ながらリフォーム市場が大きくなれば、新製品のシェアを食います。また通常の宝石店の業態が物販であるとすると、リフォームはサービス業態です。仕入れや商品知識、接客方法も違いますし、利益率も違います。ジュエリーをたくさん販売する人がリフォームを同じように受注できるとは限りません。
しかし前述したように、現在ジュエリー業界では一般的にリフォームビジネスへの関心は高く、百貨店でリフォーム売場を拡充したり、チェーン店が自社販売員の中からリフォームオーダー専門員を養成したり、あるいはメーカーも空枠の充実やリフォームの店頭催事企画に力を入れる企業が増えてきました。
リフォームに関するトラブルや苦情が増えているのも事実ですが、これはいままでヘビーユーザー中心だったリフォームの顧客層が、ジュエリー初心者にも広がってきたことと、受注する宝石店でもリフォーム慣れしていないことが原因と思われます。(ベテランの加工技術者が減少していることも)
一方では消費者から見ると、どこがきちんとしたリフォーム受注技術を持っているか、見分けることができません。町の宝石店もファッションビルのインショップも、百貨店も同じに見えることでしょう。
「ジュエリー・リモデル・カウンセラー」は目に見える資格を創設することで、消費者と業界側に便宜を与えようという意図があるわけです。
消費者保護と業界活性化の観点から
受験資格に実務経験の制限を設けたり、GGやジュエリーコーディネーターなど既存の資格に基礎点を設定し、ペーパーテストと面接で試験を行うなど、合格基準にややあいまいなところが残りそうですが、苦心と議論の跡が偲ばれます。
話はそれますが、山口氏を始め検定委員には諏訪宝石の諏訪恭一氏など、本格派ジュエラーが揃っていますが、「リモデルする価値のない宝石」とは何かということは、議論の余地があるのではないでしょうか。
1千万円もしたカラーストーンジュエリーを御徒町で売却しようとすると十数万円の地金代でしか評価されない現実がある以上、2、3万円のジュエリーの石も高額なジュエリーの宝石も、金銭的な「価値」という意味では同じです。もちろんそんなことは百も承知のうえで、だからこそ「消費者保護という観点が必要」という発言だったと思われます。
ともあれ、こうした資格制度は業界全体がその資格に対する価値観を共有することが大事です。
9月20日の第1回2級試験の受験者目標は300人と控えめですが、販売員・職人・メーカーの営業マンを含めてたくさんの人が受験して、ジュエリー業界への刺激になることを期待します。