ブランドコレクションがプラチナ・ジュエリー業界の今後の成長を牽引
ジュエリー業界のトレンドが進化し続ける中、今後数年間はブランドコレクション化されたジュエリーが成長の主要な原動力となることが予想されている。プラチナ・ジュエリー市場の創生及び拡大を目的としたグローバル・マーケティング組織であるプラチナ・ギルド・インターナショナル(PGI)が、2023年5月に香港で開催した「プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー2023」によると、効果的なブランディングは、特に若年層が高く評価する「消費者との強い関連性と繋がり」を生み出すものであるということが明らかになった。
プラチナ・ギルド・インターナショナルCEO ヒュー・ダニエルは次のように述べている。「ブランディングの価値は、ファッション等の他のラグジュアリーカテゴリーではよく理解され展開していますが、比較するとジュエリーは遅れています。この部分での様々な機会を引き出すため、PGIは消費者調査と知見を活かしてブランド化の枠組を開発しています。パートナー企業との協力のもと、強いストーリー性やデザイン、そして新技術を通して、消費者が求めるようなプラチナ・ジュエリーのブランドコレクション作りを進めています。」
■市場別プラチナ・ジュエリーのレビュー
【日本】若い女性の価値観を反映した繊細で手頃な価格の商品が「プラチナ入門」カテゴリーを作り上げ、将来の需要を生み出す手段に
日本では高品質のジュエリーと言えばプラチナであり、2022年の総販売個数の25%を占めている。高級ジュエリーの多くがプラチナ製であるため、平均単価は市場平均を大きく上回っている。プラチナのステータスが非常に高いことから、ブランドコレクションにおいてプラチナ・ジュエリーは強固な基盤となる。
新型コロナウィルスの蔓延が消費者のジュエリーへの関心を急激に高めたことを反映して、2022年のジュエリー市場は14年ぶりの売上高を記録。プラチナ・ジュエリーの小売りオンス売上高は前年比で6.2%成長し、消費者心理の回復とジュエリーを購入する観光客の回帰により、この成長は持続すると予測されている。
日本は高齢化社会である一方で、プラチナを受け入れる可能性のある若い消費者の層も厚いという面を持つ。20~34歳の女性の収入は増えており、また自己購入の意欲も高まってきている。こうした若い女性は、自分らしさを表現するジュエリーを求めているものの、ブライダル以外ではジュエリー業界で見過ごされがちになっている。
プラチナ・ジュエリーの未来のヘビーバイヤーの育成を目的として打ち出されたのが、業界トップクラスの小売パートナー4社による手頃でフレッシュなプラチナ・ジュエリーのブランドコレクション「プラチナ・ウーマン」である。2020年11月の発売開始以来、小売パートナー社での売上は2022年も伸び続け、前年比+69%の売上高を記録している。
【中国】ファッション性の高いプラチナ・ブランドが若い中国人女性の心を掴み、不確実性が増す中においても強い結果を出す
世界第一位のジュエリー市場である中国では、成長が3線都市や4線都市へと移行しており、迅速にブランド・ジュエリーの取り扱いを行っている大規模なジュエリー小売チェーンへの移行も進んでいる。
2022年は企業活動が約2会計四半期にわたって停滞したことから、中国の経済と消費者にとって極めて厳しい年となった。コロナウィルスの感染拡大が散発的に発生したことで消費者心理が冷え込み続け、製造業のショールームや小売店では入店者数が激減している。
プラチナ・ジュエリーの製造は前年比マイナス32%となり、2022年の消費量50万オンスの半分にも満たない結果となった。店舗への入店者数が大打撃を受けたため、小売業者は商品の補充に消極的となり、また在庫量も最低限に留められた。
2023年においては一定の回復が見られているものの、状況は依然不透明である。しかしながら長期的には、プレミアムなプラチナ商品を打ち出すことで消費者とジュエリー業界に対する強い魅力を築くことになるといえる。「プラチナ・モーメント」等のブランドコレクションはポストコロナ期における中国でのジュエリー市場の回復に貢献しており、今後も続くとみられている。「プラチナ・モーメント」は現代的な女性らしさを自分なりに解釈し、辛抱強さとエレガンスの兼ね備えたいという若い女性層に向けたコレクションであり、彼女たちのニーズに合った手頃な価格の選択肢を提供している。
デザインの革新と新技術を存分に発揮した「プラチナ・モーメント」コレクションは2022年には150を超えるSKUを展開し、取扱店舗は2018年の50店舗から2022年には1800店舗と大きく成長。2020年から2022年にかけての販売量は、コロナウィルス感染拡大やその対策が展開された中でも年平均成長率(CAGR)11%を記録している。
【インド】 急成長するプラチナ市場で、強い価値観を称え、若く裕福な都市部の男性層にアプローチ
インドには成熟したジュエリー市場と深く根付いた宝飾文化があり、経済的に自立した若い消費者の厚い層が存在している。小売チェーン企業や業界がインドでのジュエリー業界の成長を牽引する中、プラチナは若い消費者のニーズに応え、パートナーの利益増を促進することで大きな価値を生み出している。
コンバージョン促進とマージン増加を目的としたプラチナ・ジュエリーは、2022年の消費量が前年比20%増の19.8万オンスとなりジュエリー市場でのトップカテゴリ―となった。小売面でもPGIのパートナー企業の売上は前年比26%増を達成。PGIは、プラチナ特有のマージン機会と消費者需要の強化に助けられ、プラチナ・ジュエリーは2023年も力強く成長すると予想されている。
インドの1,200万人の若く裕福な都市部の男性は、ブランド・ジュエリーの顧客候補であり、現在は空白地帯となっています。どのジュエリーも応えられていない、この層の男性の進化し続ける価値観や願望を満たすため、PGIは「メン・オブ・プラチナ」コレクションを開発した。
2022年、「メン・オブ・プラチナ」はブランドの価値観を体現する存在としてクリケット選手KL・ラフールをブランドアンバサダーに採用し、インド人のクリケット愛を活用。パートナー企業との共同PR活動を展開し、発売当初から小売売上は5倍に成長し、取扱店舗も1000店舗近くと約倍増した。
【アメリカ】ファッション性の高いプラチナ地金ジュエリーのコレクションをアメリカ女性に提供
2021年に過去最高の売上高を記録したアメリカのプラチナ・ジュエリー業界は、2022年も特筆すべき業績を達成した。2022年はインフレや世界的なサプライチェーンの問題、そしてウクライナ戦争とそれに伴う経済制裁など、多くの困難がありながらも小売売上は前年比9%増。個人消費は引き続き堅調であり、金の価格の高騰に敏感な業界がプラチナを好むため、2023年の見通しは引き続き明るいとみられている。
これまで、アメリカではブライダル市場以外のプラチナ・ジュエリーは非常に限られていた。日本とアメリカのPGIが共同で立ち上げた、地金のみのプラチナ・ジュエリーブランド「プラチナ・ボーン」は、個性を表現するユニークなデザインを求める若い女性に現代的な女性らしさを与えている。
信頼できるメイドインジャパンの「プラチナ・ボーン」は、ニーマン・マーカスやサックス・フィフス・アベニュー等の高級百貨店をはじめ、これまでプラチナ製品の取り扱いが限定的であった流通チャネルでのプラチナ流通拡大を実現している。2022年には高価格帯・低価格帯の両方で23の新しいSKUを追加しており、2022年の販売個数は前年比2倍、ドル売上は同60%増であった。
PGIのヒュー・ダニエルCEOは「各国の消費者のニーズにそれぞれ応えるため、国によってアプローチは異なりますが、ブランド・コレクションがプラチナ・ジュエリー業界の将来にとって大きな成長の原動力となることは明らかです」と語っている。
■「プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー」について
「プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー(PJBR)」は、PGI が活動拠点を置く主要 4 か国(⽇本、中国、イ ンド、アメリカ)を対象に、独⽴調査機関による宝飾⽤プラチナ需要、⼩売販売、業界トレンドの調査結果を、PGI が年次報告書として編纂したものである。この調査は、⾃動⾞触媒に次いで世界第⼆位の消費量を誇るプラチナ宝飾⽤ 需要の実績を明らかにするものであり、上記 4 か国で製造業者および⼩売業者を対象に実施された。
「プラチナ・ウーマン」