「真実の貴金属」プラチナ、その世界的な成長期を予測
プラチナ・ギルド・インターナショナル(PGI)は、2025年5月にロンドンにおいて、「新たな需要の時代に輝きを放つプラチナ・ジュエリー」をテーマに「プラチナ・ジュエリー・ビジネス・レビュー(PJBR)2025」を開催。プラチナ生産者、宝飾業界の専門家やリーダー、投資家、アナリストが一堂に会し、プラチナ・ジュエリーの新たな可能性を探った。

ティム・シュリックCEO
PGIのCEOティム・シュリックは、プラチナ宝飾品市場の過去と現在の状況を検証し、ホワイトゴールドからの転換を背景にプラチナ・ジュエリーの需要が大幅に増加する機会について説明した。
また、PGIのジュエリーにおけるプラチナの新しいグローバル・ブランド・プロポジション 「真実の貴金属(Metal of Truth)」も発表。これによりプラチナが真正性と永続的価値の究極のシンボルであることが強調され、人生の最も意義深い瞬間を彩る中心的役割を担うジュエリーであることを再確認できる。プラチナ・ジュエリーは、純粋な白い色と高い純度を誇る、希少かつ貴重な貴金属として知られている。
「歴史的にもジュエリーは、常に意味、感情、自己実現を表現する上で中心的な役割を果たしてきました。」とシュリックは語る。
「私たちの新しいブランド・プロポジションは、プラチナを、そのような瞬間を尊重する貴金属として位置づけるものです。トレンドは変化しますが、真実は不変です。プラチナは真実の瞬間を最もよく映し出す貴金属なのです。」
PJBRでは、ティム・シュリックのホストによるパネルディスカッションも実施された。パネル参加者は以下の通りである。
メタルズ・フォーカス株式会社のPGMリサーチ・ディレクター、ウィルマ・スワーツ氏、バルテラ・プラチナム・マーケティング株式会社のマーケティング最高責任者、ヒルトン・イングラム氏、ウェストン・ビーマア・ホールディングス株式会社のマネージング・ディレクター、アンドリュー・モートン氏、田中貴金属リテイリング株式会社CEO、田中和和氏。
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パネルディスカッションでは、プラチナと金の価格差が拡大する中、業界がプラチナ・ジュエリーの開発機会をどのように捉えることができるか、バリューチェーンにおける様々なプレイヤーの視点を通して議論された。14K以上のホワイトゴールドジュエリーは、プラチナが特に代替機会を獲得できるとパネルで考えられた領域のひとつである。
PGIグローバル・コーポレート・マーケティング・ディレクター、ジェンジェン・リウから、2024年のプラチナ宝飾品市場の需要と2025年の見通しについても報告がなされた。 PGIは、各主要市場において消費者に焦点を当てた戦略的な取り組みを通じて、いかに需要を喚起し、消費者および宝飾業界に対してプラチナの利点と価値を紹介しているかを提示した。
日本:金からの転換と、資産用およびブライダルの継続的な増加がプラチナ・ジュエリーの需要を押し上げる
日本においては、金とプラチナの価格差が拡大したことにより、金からプラチナへの転換が進展した。これにより、金の生産量は前年同期比で7%減少し、プラチナは同11%増加した(メタル・フォーカス株式会社提供)。 プラチナの小売オンス需要も前年比6%増加しているが、これは資産形成を目的とした宝飾品への嗜好の持続、婚姻件数のわずかな増加、ブライダル用プラチナ地金のシェア拡大、ならびにインバウンドの継続的な追い風が要因である。 プラチナは依然としてホワイトメタル市場を席巻しており、昨年の宝飾品総売上個数において28%までシェアが増加した。一方、ホワイトゴールドは19%までシェアを減少させており、この傾向は本年も加速すると見られる。
インド:盛況のメンズジュエリーが中東での拡大も牽引
インドにおいては、2024年第2四半期に総選挙が実施され、宝飾品事業は混乱したものの、プラチナ・ジュエリーの製造量は前年同期比14%の増加が推定されている。 通常の取り組みに加えて、「メン・オブ・プラチナ」ブランドのM.S.ドーニ・シグネチャー・コレクションの成功が成長を後押しした。「メン・オブ・プラチナ」は、インドPGIが展開する3ブランドの中で、小売オンス売上に最も貢献するブランドとなった。
PGIは、パイロット・プロジェクトとして中東市場にもブランド・ジュエリーを導入した。アラブ首長国連邦(UAE)を皮切りに、3つのPGIインド・ブランドをインド人駐在員、その他の南アジア系住民、ならびに地元首長国の消費者に紹介した。 2025年におけるインド国内のプラチナ宝飾品製造およびUAE市場での需要は、メンズジュエリーの主導により2桁成長が予想されている。
アメリカ:プラチナと金の価格差と業界支援により、ホワイトゴールドからの移行が加速すると予測
アメリカにおいては、小売業者がホワイトゴールドの在庫をプラチナへ転換したこともあり、プラチナ・ジュエリーの小売総売上高は前年比7%の増加が予測されている。 また、ラボグロウン・ダイヤモンド市場の拡大は、平均販売価格の上昇および利益率の最適化に寄与し、小売業者がプラチナに注力する動機となっている。
さらに、アメリカPGIは2024年6月に、バルテラ・プラチナム社とアロイド社が共同開発した新しいプラチナ合金「イノヴェオ・プラチナ」を導入した。 この合金は、製造効率の向上を図るものであり、デザイナーやジュエラーから提起されていた課題に応えるよう設計されている。 発売以降、30社以上のメーカーが本合金の試験を実施している。
中国:川上の勢いが製造需要の回復を促進
金価格の上昇を追い風として、2024年第4四半期におけるプラチナ・ジュエリーの生産量は前年同期比10%の増加となった。2025年第1四半期においてもこの回復基調は持続し、同50%の増加に至った。 これを受けて、中国における宝飾品製造の中心地である深圳では、数十のプラチナ専門卸売ショールームが新設されたほか、複数の金主体のメーカーが生産ラインをプラチナへ転換した。
このような追い風環境下において、PGIは各市場の業界パートナーとの協力体制を構築し、積極的な活動を展開することで、2025年にプラチナ・ジュエリー市場において意味のある持続的な回復を遂げる可能性がある。
■プラチナ・ギルド・インターナショナル(PGI)について:
PGIは、プラチナ・ジュエリーに関する消費者市場および取引市場を創出・拡大・強化することを目的とする、世界的なマーケティング組織である。 同機構は、世界の主要なジュエリー市場に拠点を構えており、ジュエリー小売業者ならびに製造業者との協業を通じた多様なプログラムを通じて、パートナー企業に対してプラチナ・ジュエリーの機会を特定し、その需要を創出している。