フォーエバーマークがもたらすダイヤモンドの新しいパラダイム
(2009年4月2日取材:ジャパンプレシャス56号掲載分)
いよいよ2009年5月から、デビアス グループのダイヤモンドブランド、フォーエバーマークが日本で発売開始となる。
このプログラムは2006年11月よりパイロット展開されていたが、今年が本格的なグローバルローンチとなる。フォーエバーマークは、品質のみならず産地から消費者の手に渡るまでのすべての工程を保証し、その証としてダイヤモンドにはフォーエバーマークのアイコンととともに個別認証ナンバーが印されている。また厳しい基準を満たす選ばれたパイプラインだけで流通する。
今までのキャンペーンと大きく異なるのは、フォーエバーマークダイヤモンドだけがフォーカスされることだ。その意味でフォーエバーマークプログラムはデビアス グループのみならず、ジュエリー&ダイヤモンド業界に大きな枠組みの変化をもたらすことになる。
化粧品業界でブランドビジネスに手腕を振るってきた山田幸洋社長に、フォーエバーマークの具体的な目標と戦略を聞いた。
まず100店で発売開始
――今回弊誌で消費者調査をしたのですが、フォーエバーマークの認知度が全体で2.8%と非常に低かったんです。
山田 そうだと思います。私どもの調査でも5%ぐらいの認知度でした。ただそれはあえてパイロット展開中は、知名度が上がらないように意図的な行動でしたので、そこは誤解のなきようよろしくお願いします。
フォーエバーマークは、ダイヤモンドの中でも1%だけという非常に限られたダイヤモンドに印されます。今日本に22,000店の宝飾店がありますが、その中で今年は100店で発売いたします。
まだ我々の活動は始まったばかりですから、本格展開はこれからというところです。2008年12月1日にフォーエバーマーク株式会社が設立されて、4ヶ月目です。私も同じ入社日で、まだまだ新入社員の心構えです。
活動はこれからだと申し上げましたが、我々としては自信を持っています。その裏づけは中国市場での大成功です。去年の11月に香港と中国でスタートして、中国では78店舗で始めて、2月の参加店の売上が1.69倍。1店あたりの売上個数は去年の6個から15.5個に伸びています。1月に325個売った店もあったというぐらい爆発的な人気になっています。
香港も中国同様順調です。インドは今のところ特殊な市場で、富裕層に特化した活動を予定しています。そして世界で3番目として、日本では5月からスタートします。
消費者の購買態度の変化が追い風に
――中国に比べて成熟した日本の市場でも自信があるという、具体的な理由は。
山田 まず参加店の方々の反応です。皆さん早くやりたい、これは絶対売れるとおっしゃっています。
もうひとつは、消費者の行動が変わって来ていることです。ブランドのバッグを持って歩くことはステイタスでしたが、今や何十万円もするブランド・バッグが、週や月単位でレンタルできる時代です。そうすると伝統的なデザインの商品は買われ続けると思いますが、一過性のものや流行にのったものはレンタルで済ませてしまう時代が来たかもしれない。
マスコミが不況だ不況だと報道するので、消費者は買ってはいけないというマインドになっています。ところが人間は、購買をしたいという欲望を抑え続けられるものではありません。今は低迷していますが、もう少しするとどんと購買意欲が高まってくるでしょう。
その時には買うための理由付けが必要だと思うんですね。やはり本当にいいもの、それから一過性でないもの。ブランド品でも50年前から同じデザインのものですね。いつまでも未来永劫に価値があり、自分が買って子供にも孫にも、曾孫や玄孫(やしゃご)まで伝えられる価値があるとすれば、これこそいいお買い物ではないでしょうか。
受け継がれていくもの。フォーエバーマークはそこを押さえて、お客様に喜んでいただきたいと思っています。
また、食品の産地偽装がいろいろ問題になっていますが、やはり消費者は正直なもの、信頼できて安心できるものには、しっかりとお金を使うという時代に入っていくのではないでしょうか。
いろいろな方から「経済不況の今は、フォーエバーマーク発売のタイミングとしてはあまりよくないのでは」と言われますが、むしろコンセプトが伝わりやすくフォーエバーマークにとって最適のタイミングだと考えます。
「ダイヤモンドといえばフォーエバーマーク」
――フォーエバーマークはショップブランドでもメーカーブランドでもなく、素材ブランドです。いろいろな場所に流通して、ブランドイメージを保てるのかという疑問があるのですが。
山田 たとえば香水なら何を思い浮かべるかというと、シャネルのNo5。「○○といえば○○」と言われるような「ダイヤモンドといえばフォーエバーマーク」が、これから我々が定着させていきたい目標です。
そういう意味ではフォーエバーマークは単なるブランドではありません。我々はダイヤモンドの流通を採掘から販売まで保証している確かなものです。
我々がお勧めしているのは「インテリジェント・チョイス」、即ち「賢い選択」です。その正しい選択の答えとしてフォーエバーマークが出てくるわけです。これはまったく面白い、新しいブランドビジネス形態なのです。
――品質はデビアスグループが保証しているというわけですね。1%に満たない量というのは、何か全体の流通量の中で理由があるのですか。
山田 フォーエバーマークは厳しい鑑定を経て、アントワープの施設でアイコンを印されます。0.18ct以上で大きいものは現在102ctまであります。グレードはSI2以上、Kカラー以上、カットはベリーグッド以上です。
ダイヤモンドというのはいろいろ種類もありますし、4Cもありますが、それに加えて我々は採掘の瞬間から高い倫理性を持って、世界に貢献しているという自負があります。フォーエバーマークの厳しい基準を満たす品質と倫理性を備えたダイヤモンドは、それだけ希少性のある厳選されたダイヤモンドなのです。
ボツワナなど産出国でもダイヤモンドは地域経済の発展に大きな役割を果たし、貧しかった国が豊かになっているなど、社会に大きく貢献しています。
この前ファッション雑誌の方々にご説明したのですが、高い評価をいただきました。彼らによれば今消費者は不景気の中で、何か背中を押してくれるものが欲しいそうです。先ほどの社会に貢献できるという大義名分、消費することに対する意味合いがあって、魅力的なストーリーがあればみんなが飛びつくとおっしゃっていました。
フォーエバーマークの約束
――フォーエバーマークは、品質だけを訴求するダイヤモンドではないということですね。
山田 品質というのは、フォーエバーマークの約束の一部でしかありません。ダイヤモンドのブランドというと、「じゃあ品質がいいのですね」とよく聞かれます。それもありますが、どこを切っても本当に安心できるダイヤモンドであるために、鉱山から研磨する人まで本当に選ばれた人だけです。研磨会社も世界に今3千社あるうち約30社だけ。流通のパイプラインの先で販売する店にもいろいろ条件があります。
ダイヤモンドを買う時は何かの大切な時です。だからそれが0.18ctであっても102ctであっても、お客様は同じ安心感が欲しいんです。フォーエバーマークは安心を約束して、お買い物体験を楽しんでいただける。フォーエバーマークの約束のような「思い」というのは、他のブランドにはない体験ですね。
――カナダやロシアの鉱山もブランディングの動きがありますが、皆がやり始めたら差別化が難しくなりませんか。
山田 普通、鑑定は通常2回ですが、フォーエバーマークは5回チェックしています。何らかの不正が起きないように、ラボに送る時はどのサイトホルダーの石かわからないようになっています。1回でも違う鑑定結果が出れば、最初からやり直します。これはすごいことだなと思っています。徹底しているんです。
ですからライバルが出てくるというのはまったく脅威ではありません。同じレベルのことを他の方々もやってくださるなら、それはダイヤモンド業界の活性化になります。ただデビアスグループのように長年築いてきたパイプラインがないと、なかなかフォーエバーマークのようなブランドはできないと思います。
もうひとつの特徴としては、幅広い価格帯があるので、いろんな人にダイヤモンドを楽しんでいただけます。今までブランドというのは、ターゲットの年収は何千万ぐらい年齢は何歳と決めてという考え方でしたが、フォーエバーマークは全く新しいマーケティングです。年齢、性別、年収、ターゲットはありません。裕福な方から一般の方々までみな手が届くブランドです。同じダイヤモンドブランドではあるわけですけども、百貨店でもナショナルチェーン店でも販売されます。
一方では参加店は、それぞれその顧客に合ったデザインを提供していくわけです。そこでお客様に喜んでいただいて、ダイヤモンドに愛情を持って説明をしていただければ、ブランドとして成功と言えるのではないでしょうか。
そういうところがちょっと今までの普通のビジネスと違う形態ですね。
高い倫理性や専門性――12の基準
――参加店の目標が少なめに感じますが、希望者はもっと多いのではないですか。
山田 もちろん大々的に公募をかければもっと増えるでしょうけど、これだけダイヤモンドの安心感に対して厳しくやっていますので、そういうやり方は考えておりません。
フォーエバーマークに参加していただくお店として、12の基準があります。大きく分けると倫理性、専門性、クオリティ、それから当社に対する理解度。
たとえば倫理性について。人工石や処理石をきちんとお客様に伝わるように情報公開していればいいのですが、何も表示せずに黙って売っている店はお客様を騙していることになってしまいます。そういうお店とは契約できません。ということで12の基準をクリアしていただかないと、我々も握手はできないということになるわけです。ですからお断りせざるを得ないこともあります。
――店の規模の大小が基準ではないのですね?
山田 たとえば銀座の大きなブティックであっても、地方の小さなショッピングアーケードの中のお店でも、12の条件をクリアしていただくことを大切にしています。チェーン店もそこの全店が参加するわけではありません。倫理性だけでなくクオリティや専門性の基準がありますから。それに全店というのはお互いに大変ですね。
(2へ続く)